管理者:金原瑞人

6-321
著 者:Michael Laser (マイケル・レーザー)
出版社:Atheneum Books for Young Readers, New York
出版年:2001年2月
頁 数:113頁 (ペーパーバック版)
ISBN :0-689-83372-5
対象年齢:10−14歳
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1960年代のアメリカ。マークは、先生に怒られるのがこわくて、できるだけ目立たないようにしている。6年生になると、担任は学校で一番厳しい男の先生になった。マークにいろいろなことがおこる。好きな子ができたり、ライバルが現れたり、他のクラスの子たちとクラス間の決闘をすることになったり、両親の離婚の問題があったり……。それらの事を通して成長する。
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― 作家紹介 ―
マイケル・レーザー: 6-321の舞台によく似たニューヨーク市の近隣で育つ。多くのショート・ストーリーを雑誌に発表した。The Rainという子ども向けの絵本、それにOld Buddy Old Palという大人向けの小説が出版されている。妻と子ども達とニュージャージ―に住む。

―主な登場人物―
マーク …… 主人公。小学6年生の少年。
ヴィゴリッティ先生 
    …… マークのクラスの担任の先生。
リリー …… クラスメートの少女。
ニッキー…… 不良少年。
ケアリー…… クラスメートの少年。

―あらすじ―
 学校ではあまり変わったことはない。でも6年のときは違った。二ヶ月の間にいろいろなことが起こった。
 ぼくにとって、学校は恐ろしい所だ。先生に叱られないように、静かに目立たないようにしている。6年生になると、学校で一番きびしいヴィゴリッティ先生が担任になった。今までで最も恐ろしい先生だ。でも先生をこわがっていたのはぼくだけではない。幼稚園のときから知っているリリー・ウーもそうだ。リリーは努力家で優秀だが、はずかしがり屋で、授業で手をあげたことがない。発表のことで緊張していた彼女をリラックスさせようと笑わせたのだが、その笑顔をみてから、ぼくはリリーに夢中になってしまった。
 ある日の昼休み、リリーを見つめていると、後ろからばかにした笑い声が聞こえた。ケアリーという同じクラスの男子だった。ケアリーはかっこよくって、背の高い男子のグループのリーダーだが性格が悪い。ぼくのことを笑っているのかな。そんなことを思っていると、突然誰かがぼくの足を蹴り、ぼくがうつぶせに倒れると馬乗りになって殴りだした。いったい何が……。肩越しに見るとそれは怒り狂っている他のクラスのいじめっ子のニッキーだった。まもなくヴィゴリッティ先生が駆けつけてくれた。理由を聞こうとしていると、校長先生がやってきてぼくたちを怒鳴りつけた。ヴィゴリッティ先生はぼくをかばってくれたのだが、校長先生は聞く耳をもたず、ぼくとニッキーは「1年生からやり直しだ」といわれ、1年生の教室へつれていかれた。ぼく達はひとりごとをいっているような感じで、その教室の先生に気付かれないように話しをした。それでケアリーが笑ったのをぼくが笑ったのだと勘違いしたことがわかり、ニッキーの誤解もとけた。一年生の教室からはその日だけで開放された。ニッキーはそんなに悪い奴じゃなさそうだ。
 一週間後、ニッキーは別の件で先生に叱られ、ぼくのクラスに入れられることになった。校長先生がニッキーをしつけられるのはヴィゴリッティ先生しかいないと思ったからだ。ぼくのクラスは6の321。ニッキーは6の309の生徒だ。学校は以前は成績順にクラスを1組から決めていたのだが、それでは7組の生徒が傷つくので、それをやめて教室の番号で呼ぶことになった。だけど321がトップの6年1組で、309が一番下の6年7組だっていうことはみんな知っている。
 ヴィゴリッティ先生はリリーにニッキーの勉強を手伝ってやるようにいった。放課後、忘れ物を取りにもどったら、リリーはつらそうな顔でニッキーに教えていた。先生に抗議しようかと思ったけど、そうしたらリリーが好きだってことがばれそうなのでできない。
 恐しいと思っていたヴィゴリッティ先生だが、一番いい先生だと思うようになった。教え方に様々な工夫がしてある。先生がケネディ大統領について話してくれたことは特によかった。先生は厳しいが、きちんと評価してほめてくれる。ぼくは提出した作文に「すばらしい!」と書かれてから、すごくやる気になった。
 クラス劇で、「ジュリアス・シーザー」をやることになった。ぼくはリリーの気を引こうとシーザー役に立候補するが、ほかにも立候補者がいた。先生は立候補していなかったニッキーにシーザーの役を、ぼくにはブルータスの役を与えた。
 秘密暴きごっこで、ケアリーがリリーのことを好きだということがわかった。すると、ぼくの友達のハワードが、ぼくもリリーが好きだといってしまう。それからケアリーの嫌がらせがはじまった。でもぼくも負けてはいない。
 ニッキーの前のクラスの何人かの男子が、劇の準備のじゃまをするようになった。だんだんひどくなってきて、6の309とぼくのクラスの緊張が高まった。ある日、ハワードが待ち伏せされ、被害にあう。ぼろぼろになり頬から血が出ているのを見て、ぼくのクラスの男子は怒りがおさまらない。ぼくは「クラス対クラスで決着をつけよう」といった。ニッキーは、もう一度問題を起こしたら退学になるといわれているせいか、決闘に加わらなかった。ケアリーも加わらなかった。決闘は来週の金曜日の放課後にきまった。
 決闘をいいだしたことは、すぐに後悔した。あまり、そのことを考えまいと、家の中からリリーのアパートを見ていると、ケアリーが入っていくのが見えた。どうにかしなくちゃ。今すぐに!  
 ぼくはリリーの家へ飛んでいった。三人でゲームをしたが、ぼくとケアリーは、つい、リリーの前で言い争いのけんかをしてしまった。
 リリーは「あなたたちをがっかりさせたくなくていわなかったけど、わたしには好きな人がいるの」といった。
 誰が好きなのか、ぼくがたずねると、リリーは「ニッキー」といった。
 お父さんが家をでていくことになった。ガールフレンドがいるそうだ。ぼくの友達の親はだれも離婚していないのに。部屋を暗くしてベッドに横になっていると、早めに帰ってきたお父さんが部屋にはいってきた。そしてお父さんとお母さんはしばらく別居するといい、それは二人の問題で、おまえはちっとの悪くないんだといった。
 ぼくのむしゃくしゃする気持ちをヴィゴリッティ先生は見ぬいて、心配してくれた。ぼくは結局、何もいわなかったけど、そんなに親身になって心配してくれたのは先生だけだ。
 決闘の日がきた。正気とは思えない。でも誰もやめようといいだせない。リリーの友達のジュリーがきて、「リリーとのことを聞いたけど、この世の終わりってわけじゃないし」「ニッキーの方がいいなんて、人の好みはわからないわ」といってくれた。ぼくは決闘のことを打ち明けた。
 授業中、教頭先生がやってきてヴィゴリティ先生を廊下に呼んでなにか話している。だれかが決闘のことをばらしたのだろうか。戻ってきた先生はとても動揺していた。そしてケネディ大統領が亡くなったことを伝えた。教室は静まりかえった。すすり泣く子もいた。ぼく達は黙祷をした。
 6-309のやつらは決闘の場所、丘の上へ向かっていた。ぼくのクラスも歩き出した。丘の上は狭くてみんなが立つこともできないぐらいだ。相手はみんな大きいかと思っていたが、大きいのは数人だけだ。目を赤くしている子もいる。場所が狭いので1対1の勝負にするかどうかもめているとき、ぼくは思わず口を開いた。
「どう思われてもかまわない。でもこんなことやめるべきだ。恥だよ。大統領が死んだっていうのに」
 だれかがやじをとばそうとすると、ニッキーが「だまれ。マークはただしい」といってくれた。「延期したい人」というとぼくがいうと、309の二人をのぞいてみんな手をあげた。そして延期となったのだが、それっきり決闘のことをいいだす者はなかった。309のやつらもちょっかいをださなくなった。丘から引き上げてくるときにリリーとジュリーを見かけたが、リリーはニッキーのことを心配してきたのだろう。
 ケネディ大統領のお葬式をお母さんとテレビで見た。お母さんは泣き出したが、それは大統領のことだけでなく、自分のことでも泣いているのだと気がついた。ぼくのことをいつも「太陽」とか「元気のもと」とか呼んでいたので、なんとかしようと思った。そして、「映画でも見にいって、少しは楽しもうよ」といった。お母さんは落ち着いてきて「そうね」というと、やさしい目でぼくを見た。
 映画を見にいき、お母さんの気分もよくなったようだ。帰り道、リリーとリリーのお母さんを見かけた。ぼくは会いたくなくて顔をそむけたが、お母さんがリリーのお母さんに声をかけた。ご主人はお元気ですか、の社交辞令をきっかけにお母さんはまた泣き出した。ぼくはリリーにお母さんが泣いているのを見せたくなくて、リリーをポスターのところへ呼んだ。二人ともそこにいたくなかったのだが、しかたなく話しを始めた。最初はぎこちなかったが、ぼくは軽口を叩けるようになった。
「みんな、ニッキーのことを人殺しかなんかのようにいうけど、そうじゃないの。わたしのこともみんな誤解しているわ。おとなしくってまじめだなんて、もういや。ニッキーみたいになりたいの」リリーは自分の気持ちをはきだした。
 お父さんは毎週、土曜日になると迎えに来てくれた。ぼくがやりたいことを決めて、それを一緒にやった。一緒に住んでいた頃より、たくさん話すようになった。運転中にお父さんが子どもの頃の話しをしてくれるのがぼくのお気に入りの時間だ。
 その学年が終わったある日、お父さんと外出中にヴィゴリティ先生を見かけた。以前のお父さんだったら何もしなかっただろうに、お父さんは先生に声をかけ、先生に感謝のことばを述べた。先生はこちらこそといった。そしてぼくが劇作コンテストで賞をとったことをいい、いつも使っていた万年筆をぼくにくれた。うれしくて特別なことを書くときだけ使おうと思った。
 ジュリアス・シーザーの劇は成功した。お母さんはシーザーをやった子はカリスマがあるわねといった。
 その後、ニッキーにはガールフレンドができた。リリーだ。二人を見かけたが、ニッキーは歌を歌い、リリーは目に化粧をして笑っていた。あんなに楽しそうな彼女を見たことがない。少しは嫉妬をしたが、それほどでもなかった。ぼくはジュリーと仲良くなっていたからだ。恋愛とはちょっとちがうけど、ジュリーは楽しい子で、家に来たときもお母さんを大笑いさせてくれた。
 ケアリーが「リリーとニッキーのことをしってるんだろ」とぼくにきいた。そして、「おまえにしたことを謝りたくってさ」といった。ケアリーはひどく落ち込んでいた。ぼくはかつての敵に元気になってほしいと思った。
 クリスマスの日にぼくは友達三人と、ロックフェラーセンターへ行った。お母さんがはじめて友達と街中へ行くのを許してくれたのだ。子どもだけで街へいったことは自信になった。大きくなることで、一番いいのは自由になることだ。

―感想―
 いくつかの事件や出来事を通して成長していく少年の物語。とりたてて新鮮味はないが、主人公のすなおな気持ちが鮮やかに描かれていて、ほほえましくすがすがしい。また、ヴィゴリティ先生も非常に魅力的。

 copyright © 2003 Mizuhito Kanehara

 last updated 2003/9/8