管理者:金原瑞人

【書籍データ】
 タイトル:doing it
 著  者:Melvin Burgess(メルヴィン・バージェス)
 出 版 社:Andersen Press Limited ISBN:0-86264-788-6
 出 版 年:2003年
 ページ数:ハードカバー 330ページ

【著者紹介】
 メルヴィン・バージェス:1959年ロンドン生まれ。二十代より執筆を始めたが、第一作の出版までは15年を要した。処女作は1990年に出版された『オオカミは歌う』。『ダンデライオン』はガーディアン賞、カーネギー賞を受賞している。他に『メイの天使』、『エイプリルに恋して』、『リトル・ダンサー』が邦訳されている。フルタイムの作家としてマンチェスターに在住。

【概要】
 ディノ、ジョン、ベンの高校生三人組とそれぞれのガールフレンドとのセックスを巡るさまざまな出来事を、性へのとまどいや、周囲の目に対する意識、モラルとの葛藤などの心理描写と絡めつつ、ユーモラスに描き出したスラップスティック風味もあるコメディー。バージェスは、ヤング・アダルト小説におけるセックスのあり方を変えたと言われる作家であり、本作でもきわどい性描写が多用されているが、いずれも必然性があり、普遍性のある青春小説として仕上がっている。文体は口語・俗語が多用されるが平易で、三人称による地の文に、適宜一人称による独白が挿入されるという形式になっている。

【主な登場人物】
 ディノ(ディーン) … 主人公。学校一もてる男子生徒で、学校の華、ジャッキーを想っている。
 ジョン(ジョナソン) … ディノの友人。
 ベン  … ディノの友人。
 ジャッキー・アトキンス  … ディノが好きな相手。
 スー  … ジャッキーの友人
 デボラ  … ジャッキーの友人。
 アリ  … 教師。

【あらすじ】
 ディノ、ジョン、ベンはウッド・エンド校の悪友同士。関心の的はもっぱらセックス。今日も三人でつるんではセックス相手の究極の選択などというたわいない会話に興じていたが、実のところ、三人はそれぞれセックスにまつわる問題を抱えていた。
 ディノは学校一のハンサムボーイで、女の子たちの憧れの的だが、昔からこれも学校一の美少女であるジャッキーのことを思い続けている。ジャッキーの方は、サイモンという八歳年上で両親も公認のボーイフレンドがいて、ふだんはディノのことを歯牙にも掛けていない。そんなある日、ディノはストロベリー・ヒル・ユースクラブでジャッキーにダンスを申し込み、ジャッキーは悪戯心からこれを受け、ディノにキスまでしてしまう。それがきっかけになって、ディノとジャッキーは二人で出かけるようになるのだが、ジャッキーはキスやペッティングまでは許しても、最後の一線を決して許そうとはしない。親友のサラは、この関係が良い結果を生まないと助言するが、ジャッキーは受け入れようとはしない。
 ある日、ジャッキーと口論して、一人で家に帰ったディノは、教師である母親が、やはり教師のデイヴ・ショートと浮気をしている現場を目撃してしまう。ディノは母親が女でもあることに気づき、ショックを受けるのだった。
 ディノの悪友のベンは、教師のアリ・ヤングと肉体関係にあった。三年前、アリが新任教師として学校劇の裏方を監督するようになり、照明や音響を担当していたベンと会話を交わすようになった。たまたま転びそうになったアリをベンが助けた時に、アリは学生ノリの冗談でパンティーを見せ、それがきっかけになって二人の間は気まずくなってしまう。でも、そのことをベンは誰にも言わずずっと秘密にしていた。その後、二人はほとんど話すこともなかったのだが、今年になって、劇の道具を二人で買いに出たときに、ベンがアリにそのことを誰にも告げていないと言ってしまう。アリはベンを信用すると言い、自宅に誘い、ベンを抱いたのだ。
 ディノの両親が週末に二人で旅行に出ることになった。ディノは母親の浮気は目の錯覚だったと思いたいのだが、あの事件をきっかけに家族に対する見方が変わってしまっていることも感じていた。母親には何度かかまをかけてみたものの、真実がどうだったのか確信は得られない。ディノは、家でパーティをすることにし、前の晩にジャッキーが手伝いにやってくる。二人はもう少しで本番というところまで行くが、その直前にまたもジャッキーがひいしまい、パーティー後には必ずと約束してその場を逃れてしまう。ジャッキーも、ディノに対して欲望を感じているのは事実だ。一緒に出かけるようになってまもなく、オーラルも済ませているし、サイモンとの関係も断ち、コンドームだって持ち歩いている。ところがいざとなると一線を越えることができなくなるのだ。
 ディノはパーティーにちゃんと人が集まるか不安だった。親しい友人たちこそ時間通りに集まったものの、他の連中がなかなか集まらず、いらだちが募っていく。ゲストが集まったのは十時過ぎになり、今度はその世話でディノは疲れていく。ジャッキーと庭で抱き合うことでようやく元気を取り戻したものの、せっかくその気になってきたジャッキーを残して、屋内に戻ってしまい、ジャッキーは怒りを覚えるばかりだ。
 ベンはディノのパーティーに出るために、自分の誕生日を一緒にすごそうというアリの誘いを断るのだが、そのことで自分が同年代の女の子たちとの付き合いを失っていることに気づく。
 ディノのもう一人の悪友ジョンは、気がつくと、人通りの多い階段のところで太った女の子、デボラとペッティングを始めていた。デボラは幼なじみで、ジョン自身も嫌いではないが、デボラが太っていることを周囲がからかうため、うまく自分の気持ちを言い出せないでいた。
 ジャッキーが別の男と抱き合っているのをディノが目撃して一度はけんかしてしまった二人だが、ディノの方から謝り、仲直りする。ジャッキーはベッドルームに先に行き、鏡に映る自分を眺めたりしながら、ディノが部屋に来るのを待っていた。
 ようやくパーティも終わり、ベン、ジョン、デボラ等の友人たちも帰っていく。ディノは心弾ませながら寝室へ行くのだが、ジャッキーの姿がない。ベッドには嘔吐のあと。ディノはジャッキーは気分が悪くなり、帰ってしまったのだと考える。気がつくと家の中は散らかり放題になっている。苦労を重ねて、結局童貞を捨てることもできなかったディノは、やけになり、ジャッキーと過ごすはずだった寝室で大声を上げる。するとすぐ脇で同じように大声を上げた人物がいた。
 ベンたちが歩いていると、後ろから足音が聞こえた。ジャッキーだ。ジャッキーはベッドの中に残された嘔吐のあとを見て気が萎えてしまい、逃げ出してきたのだ。デボラとジョンは、ジャッキーを家まで送ることになり、二人はディノとジャッキーのことを話の種にしながら歩いていくが、デボラの家の前までくると、ついペッティングを始めてしまう。
 大声を上げていた少女ゾーイは、招待客ではなく、パーティーに紛れ込んで、金目の物を盗んでいた不良少女だったが、たまたま疲れて眠り込んでいたのだ。ディノはそうとは知らず、ゾーイを抱こうとするが、いざとなるとモノが縮んでしまう。二人は結局抱き合ったまま眠る。翌朝も同じだった。ディノは自分はもう一生セックスとは無縁だと思い、せめてあそこを見せてくれとゾーイに頼み、ゾーイはこれに応える。するとディノのモノは硬くなり、ようやく初体験に成功した。
 翌日、ベンはアリのアパートを訪ねた。アリはコスプレが好きで、ベンに学生服を持ってくるように命じていたが、ベンはそのことを変態だと感じていた。アリのアパートは悲惨な有様で、アリ自身も病気のように見えた。アリの母親が訪ねてきたのだという。アリの母親は、アリが初潮を迎えたときに、それを他人に言いふらしたりするような人間で、アリの誕生パーティーの最中にいきなり掃除を始め、遊びに来ていた友人たちが帰るはめになったのだという。ベンは初めて、アリの両手首に白い傷跡があることに気づいた。
 ゾーイは本当は十四歳。ディノに嘘を並べ立て、パーティーから盗んだ金で友人のサムと遊び歩いた。両親とうまくいっておらず、そのことで非行に走っているのだ。ゾーイは誰かを破滅させたいとさえ思っていた。
 ジャッキーから電話を受けたディノは、自分が別の女の子と寝たことを告げ、彼女と縁を切ろうとする。ディノは自分がジャッキーを愛していることには気づいていなかった。家はパーティーが終わったときのまま、両親はまもなく帰ってくる。手伝いに来るはずの友人たちは誰も来ない。ディノは次第にパニックに陥る。スー、デボラ、ベン、そしてジャッキーが遅れてやってきた。ディノはジャッキーに電話の話はでまかせだったと嘘をつき、部屋の片づけを頼みこんだ。
 ディノは二股をかけようと思い始めた。女の子たちががんばったおかげで、部屋はきれい過ぎるくらいきれいになった。そのことがかえってディノを神経質にした。パーティーのことを両親に気づかれるかも知れない。まさにその時に両親と弟のマットが帰ってきた。ディノの態度が悪いと両親は文句を言う。夕食の時に、ディノは母親に向かって、デイヴ・ショートの名前を口に出してしまう。その晩、両親は喧嘩を始めた。
 ジョンは、デボラのことでディノやベンからからかわれていた。それまでは自分がそういう立場で人をからかっていたことから、ジョンはその場も冗談でごまかそうとして「デボラとは付き合ってやっているんだ」と言ってしまう。ところが、それをスーやジャッキーに聞かれてしまい、態度をはっきりさせるように迫られる。夜、デボラと待ち合わせることになったジョンは、自分でも自分の気持ちがよくわからなくなっていた。公園で会ったデボラは、自分がジョンを好きであることを告げ、週末まで返事を待つという。デボラとキスするだけで欲情してしまうジョンだが、デボラと付き合うことにはなお逡巡があった。
 ジャッキーはいつも自分が正しいと思っている人間だ。そのことを知っているスーは、ディノとセックスを前提としない関係を構築するようにジャッキーを説得した。ジャッキーは自宅にディノを招くと、スーに言われた通りに話す。意外なことにディノはジャッキーの提案を受け入れた。ディノはジャッキーに振られることを恐れていたのだ。一方、ジャッキーの方は心の中では理屈と欲望の間で揺れていて、それが行動となって出てしまう。ディノはジャッキーに母が浮気をしていることを告白した。
 ベンはアリのアパートでセックスを楽しんでいた。まるで天国のようだと感じる。アリはもっと会う機会を増やしたいと言う。だがベンは情事の後には家に戻りたいと考えていた。慎重にしないといけないというベンの言葉に、アリはとりあえず納得した様子だった。
 その翌日、ディノはささいなことをきっかけに、母に厳しい言葉を投げつける。父はディノに殴りかかるが、母が飛びだしてディノをかばい、父に自分の浮気のことを告げようとする。父は泣いていたが、大事な会議があるということで出かけていく。母は、ディノに自分がもう夫を愛していないこと、金銭的な問題で別居できないことを告げる。ディノはすべてが自分の手から離れたと感じ、学校へ出かけていった。
 ディノのホームパーティーから一週間後、学校でダンス・パーティーが開かれた。ディノたちは、学生がいつもたむろしている林の中で猥談に興じていたが、それぞれ自分のガール・フレンドに対する微妙な思いもまた抱えたままだった。ジョンはデボラと一緒にパーティーを抜け出し、話し合い、デボラと付き合うことに同意する。二人がいちゃついていると、ディノとジャッキーもやはり林にやってきて、恋人同士の会話を交わしていた。
 その週末、ディノはゾーイとジャッキーの二人とデートし、すっかり自分に自信を持つようになった。また、両親はとりあえず何とかやっていけそうにみえる。セックス・フレンドも得たし、そのことでジャッキーに対するプレッシャーを軽くしていると考えていたのだ。だが、現実には自分が会話の端々でジャッキーに対するセックス願望をにおわせており、そのことでジャッキーが怒っていることには気づいていなかった。しかもディノの両親はその間にも別居の準備を進めていた。一方、次第にディノに対して本気になりかかっていたゾーイはサムから、ディノがジャッキーといまだに付き合っていることを告げられる。怒ったゾーイは、ディノを破滅させてやると決意する。
 ベンも難しい立場に追い込まれつつあった。アリの要求がエスカレートするばかりなのだ。先週は小道具置き場でセックスを強要されそうになり、今日は数学の教師の名を借りた居残りの手紙を両親に送りつけてきた。ただいっしょにいたいために。ベンが困っている理由はそれだけではなかった。ベンは、自分と同じように背の低い女の子、マリアンヌに惹かれていたのだ。マリアンヌは聞き上手だが、ありふれた普通の娘で、そこがアリと対照的だった。去年、一度交際を申し込んだが、その時はトビーと付き合っているからということでふられていた。だが、最近二人は別れたというのだ。だがマリアンヌと付き合えば、アリはあらゆる手を使って妨害するだろう。ベンはアリと別れたいと思っていたが、どうしたらよいのかがわからなかった。
 次の土曜、ディノの両親は別居を決めたことを告げる。ディノは怒り、最終的に四か月という期限を設けさせたが、その過程で両親の関係をさらに悪化させたことには気づいていない。その日はゾーイとのデートの日だった。デートに行ってみると、ゾーイは友人のヴァイオレットを連れてきていた。ディノは居心地の悪さを感じる。二人は既にCDや高価な本などを持っていたが、さらにいろいろな店を回ったあげくに、高価な服を万引きしろという。ディノが断ると、じゃあ荷物を持って見ていろと言われてしまい、ディノはその場を逃げ出すが、実は預けられた荷物も万引きしたものだった。ディノは警備員につかまり、両親も呼び出される。家に帰ると両親はディノの話もそっちのけでまたけんかを始めてしまう。翌朝、ディノはゾーイからのメモを見つける。ジャッキーに二股のことをばらすというのだ。パニックを起こしたディノはジャッキーに連絡を取るが、万引きのことばかりでなく、二股のことまで気づかれてしまい、二人は大喧嘩になる。たった一日でディノの世界は壊れてしまった。
 すぐにディノのことは学校中に知れ渡ってしまった。話には尾ひれがつき、女子はもとより、男子もディノをばかにし、噂した。一晩で学校一の色男から人間のくずに落ちぶれた感じだった。三日目にディノはジャッキーに話しかけようとしたが、公衆の面前で罵倒された。友人たちの多くがディノの相手をしなかったが、ベンとジョンはこういうときこその友と、ディノを慰めようとした。
 ある日、ベンがディノを自宅に誘うと、ディノは何が起こったのかを涙ながらに語った。ベンはその話を聞きながら考える。告白できるディノはいい。でも自分はみんな秘密にしている。そのことは本当に良いことなのだろうかと。数日前に、ベンはアリから「愛している」と告げられていた。でもベンはアリを受け入れることができなかったのだ。ベンはそのことで二人の関係に終止符が打たれることを期待していたが、アリは関係自体は続けるつもりだった。いつかベンがアリを愛するようになってくれるかも知れないと考えているからだ。アリは過去に堕胎したことがあり、ベンとの付き合いも含め、すべてが『起こる』ことと考えていた。ベンは兄への誕生日カードを買いに行った店で、こんな標語を見つけた。「愛とは『起こる』ことではなく、自分で『決める』ことだ」ベンはその言葉が自分の置かれた立場をよく表していると思った。アリが自分を愛することを決め、セックスをやる場所や方法を決めている。自分に一度も意見を求めたことはない。
 一方、ジョンは悩んでいた。自分の急所の真ん中あたりに、いぼのようなものができていたからだ。それがガンではないかという不安でずっと悩んでいたのだ。ある週末、デボラの両親が留守のときに一夜を過ごそうということになったのだが、ジョンのモノがまったく立たなくなってしまった。デボラは泊まっていって欲しかったが、失意のジョンは帰宅してしまう。
 ディノは苦しんでいた。ガールフレンドをなくし、友人をなくし、訴えられるかも知れず、両親は別れようとしている。そんな中、ベンとジョンが友人として支えてくれたことはありがたかった。ディノは父と話し合った。父は自分がもう少し家のことを構っていれば、このようなことにはならなかったかも知れないという。ディノを連れていきたいとも思うが、現実にはディノが家に留まった方が良い。ディノは父親のそんな心理がよく理解できなかった。ただ良いことも一つだけあった。ディノが奉仕をすることを条件に、万引きの件を告訴はしないという連絡があったのだ。少しだが、ディノの心は上向きになった。
 ベンはアリに別れを告げようとするが、アリは本能的にそれを察したのか学校では会おうとしない。結局、アリのアパートに行ったベンは、激しい言葉で別れを告げてしまう。翌日からアリが学校にこなくなり、ベンは数日してからもう一度だけ会ってくれという電話を受ける。ベンがアリのアパートに行くと、アリは両手首を切って待っていた。しかしケガ自体はたいしたことなく、病院でみてもらってアパートに戻ると、結局ベンはアリを抱くことになってしまう。
 最初のうちは怒っていたジャッキーだが、ジャッキーがディノにつれなくしたときに、ディノが涙を流しているのを見て、またディノのことを考え始め、スーに相談してみた。スーはそんなジャッキーが鬱陶しくなり、ディノと話をすればいいと言ってしまう。
 ベンは、アリの世話を続けていた。結局、このままでは何も変わらない。ベンは、誰かに相談しようと考える。ディノは自分の問題だけで手一杯だ。ジョンは普段は口が軽いし、お調子者だが、こういうときには頼りになる。ベンは自宅にジョンを招き、何もかも告白する。最初の頃こそ面白がっていたジョンだが、最後には憤慨し、「アリはおまえをつかまえておくために手首を切ったんだ。まるで怪物だ」という。アリは実際、学校をやめると言い出したり、ベンを連れてデートに出かけたりと、ベンが逃れられないようにしようとしていた。ベンは、アリの手から逃れるにはアリ以上の怪物が必要だと考える。そんな人物は一人しかいない。訪ねてくると留守電にメッセージを残していったアリの母親だ。ベンはメッセージを消してしまう。
 ジョンは、ベンの話を聞いてから、自分の悩みなど大したことではないと考えるようになり、勇気を振り絞って医者に行く。検査を受けるのは大変恥ずかしかったが、結果として、ガンではないかと思っていたのは単に静脈のふくらみであることを知り、安心するのだった。デボラにとってジョンは二人目のボーイフレンドだったが、前の彼もいざその段になると勃起しなかったというトラウマがあり、ジョンのことでもひどく心配になっていた。両親が再び週末に出かけることになり、デボラはジョンとうまくやれるかどうかひどく不安だったが、ジョンは別人のようになっていて、二人は無事に最後までいくことができた。
 ベンは、駅でアリの母親を待ち伏せし、コーヒーショップでアリが不安定なことや、自分たちの関係について告げる。それに対して、アリの母親は、ベンが悪いと責め、アリはもう学校に戻さないと宣言した。ベンは自分が嫌なやつだとも思ったが、同時にこれしか方法はなかったのだと考える。実際、アリは戻ってこず、数日後には代りの教員が学校に来るようになり、学校劇はキャンセルになった。夏休みにはディノがおじさんの観光船で働くという。自分もそこでバイトができるかも知れない。マリアンヌとも話すようになった。でも付き合うのはまだだ。しばらくは自由でいたい、そうベンは考えていた。
 ディノは、ようやく自分を取り戻しつつあると感じていた。ジョンやベンは口が過ぎることもあるが本当の友人であることも学んだ。ディノはジャッキーと話をして、またよりを戻そうと思った。しかしディノはすでに別の女の子に付き合いを申し込んでいたし、ジャッキーと付き合ってもまた同じことを繰り返すばかりではないかと考え、結局ジャッキーには終わりにしようと告げる。ジャッキーは一週間ほど落ち込んでいたが、すぐに立ち直った。
 ジョンとデボラ、ベン、ディノとジャッキーでどこかに遊びに行こうという話になっていたが、ディノはジャッキーを振って、その代わりに誰かを連れてくるということだった。ディノが連れてきた新しいガールフレンドはマリアンヌだった。二人がいなくなったあと、デボラやジョンは、ディノはひどいやつだと文句を言うが、ベンは「ディノは知らなかったから」とかばうのだった。さすがにカップルと一緒にいるのは辛く、家に帰ったベンはしばらく荒れ狂うが、落ち着いてから思った。きれいな女の子はいくらでもいる。ディノとマリアンヌの仲がずっと続くとは限らない。急ぐことはない。待つことも、待たないことも自分の自由なのだから、と。
 
【感想】
 十代のセックスに対する願望や幻滅をテーマにしたヤング・アダルト小説。性描写に露骨な部分もあるので、高校生以上といった感じ。
 母親の浮気、教師との禁断のセックスのような重いエピソードも取りあげているが、物語そのものは非常に明るくユーモラス。ディノとジャッキーのすれ違いのようなスラップスティック的な展開もあり、軽快なテンポで話が進むため、非常に読みやすい作品に仕上がっている。特に少年少女の揺れ動く心理描写や理想と現実とのギャップに対するとまどいがうまく描き出されており、対照的なキャラクターを配することで、ストーリーにメリハリが効いている。
 中心人物である三人はいずれも個性的で、それぞれの内面的な葛藤がうまく描かれている。一番よくいそうな存在であるジョンの考え方や悩みが共感を得やすいと思われ、また脇役で狂言回し的な役割を果たすスーがスパイス的な役割を果たしている。
 ストーリー自体は決して派手なものではなく、むしろ起こりうる出来事が随所にバランスよく散りばめられている。ディノの家庭を例に取れば、既に愛情を失っている夫婦が子供を絆にして形式的な生活を送っているのが、母親の浮気をディノが目撃したことをきっかけにして、一気に崩壊へと進んでいく。その過程で、父親にも浮気の経験があることや、仕事にかまけて家族をなおざりにしてきたこと、あるいは母親の不満など、日本と何ら変わらぬ状況が描き出されていく。
 とにかく、昔ながらの若者の悩みをそのまま受け継いでいる現代の若者が、とてもリアルに描かれている。そのうえストーリーはよく練られているし、最後まで一気に読ませてしまう。さすが、バージェスといった感じ。もしかしたら、バージェスのいちばんの自信作かもしれない。

 copyright © 2003 Mizuhito Kanehara

 last updated 2003/12/24