管理者:金原瑞人

【題名】The Grounding of Group 6
【仮題】グループ6 死の実地訓練 〜親があなたを殺そうとしたとき〜
【初版年】1983年
【出版社】Avon Books
【頁数】281ページ
【翻訳予定枚数】原稿用紙約650枚
【対象】中高校生以上
【作者】Julian F. Thompson(ジュリアン・F・トンプスン)
 アメリカの人気YA作家。多数作品を出しているが、日本では『テリーと海賊』(アーティストハウス刊)が紹介されているのみ。1970年代、ニュージャージーにオルタナティヴスクール(教科の自由な選択など、従来とは異なった教育方法を用いた学校)を設立し、数年教師やカウンセラーとして働いていた。現在、アーティストである妻のポリー・トンプスンとともにヴァーモント州バーリントン在住。

【概要】
 コールドブルック・カントリー・スクールは、ユニークな教育方法に定評のある寄宿学校。そこに5人の新入生が入ってきた。5人はリーダーである教師とともに「グループ6」という名の組に振り分けられ、入学早々、キャンプに出される。しかし、何かが変だった。教師であるナットは、やけに若いし、グループ6の移動の痕跡を隠しているようにみえる。そしてコーク、サリー、サラ、マリーゴールド、ルディの5人は、信じられない事実に直面することになった。ナットはグループ6の面々を殺すために学校に雇われた男であり、殺人を依頼したのは、自分たちの両親だったのだ。グループ6のメンバーは、果たして生き残れるのだろうか……?
 16歳のティーンエイジャーたちと22歳の若者のサバイバルとロマンスを描く、サスペンス・タッチのYA作品。

【登場人物】
コーク      16歳。男。グループ6のメンバー。
サリー      16歳。男。グループ6のメンバー。
サラ       16歳。女。グループ6のメンバー。
マリーゴールド  16歳。女。グループ6のメンバー。
ルディ      16歳。女。グループ6のメンバー。
ナット      22歳。男。グループ6のメンバー。リーダー。教師。
理事長      コールドブルック・カントリー・スクールの理事長。男。
コーン      コールドブルック・カントリー・スクールの教師。男。
ミセス・リップル コールドブルック・カントリー・スクールの教師。女。
レヴィ      コールドブルック・カントリー・スクールの用務員。男。元軍人。
アーノルド    ナットの通っていた大学の出納係。マフィアのドンのおじを持つ。
ダーリン氏    州の役人。

【あらすじ】
 グループ6のメンバー5人はみんな16歳だ。コークとサリーは男。サラとマリーゴールドとルディは女。グループ6にはほかに22歳でグループのリーダー、教師のナットがいる。やけに若くてブロンドの長髪のナットは、先生らしくない。ローリング・ストーンズを思い起こさせる。グループ6を含めた子どもたちを乗せたバスは、人里離れた寄宿学校「コールドブルック・カントリー・スクール」に向かっていた。今日は9月1日。新入学の日であり、グループ6の子どもたちは新入生だ。適当にグループ分けされて集まった5人のため、お互いのことは知らない。バスは7時間もの旅を終えて、学校に到着した。そして翌日、グループ6のメンバーは、オリエンテーションとして、リーダーと共にキャンプに出発した。
 ナットは5人をみながら思った。どうしてこのグループに入ったんだろう。入りそうにない子ばかりだ……。
 たしかに、どの子も見た目もいいし、問題はなさそうだった。しかし、5人ともそれぞれ家庭に事情を抱え、親にすすめられてこの学校に入ってきていた。たとえばルディ。ルディは第六感が発達している。ふつうの人には感じられないものがみえたり、きこえたりする。そのことが原因で、父に嫌われるようになった。母は死に、家庭にはルディの味方はいない……。
 コークは、学校生活がうまくいかず、ここに来る前は両親の意にそぐわない悪い連中と付き合っていた。また、父親にやらされていたホッケーはちっともうまくならず、父親からは「いくじなし」といわれていた。コークはそういった父親からの罵声を、一種の叱咤激励の変形として納得することにしていた。しかし、今年になって「紳士録」の家族欄から自分の名前が消されているのを知ったときは、かなりショックだった。両親に、そのわけをきくことはできなかった。真実を知るのが怖かったから……。
 サリーは、母との仲が最悪だった。両親の離婚後は母と暮らしていたが、やがて母が自分の学校の先生と付き合うようになった。サリーにはそれがショックだった。母がはっきり話してくれなかったこともある。母との仲がどんどん悪化したある日、とうとう大喧嘩になった。その数週間後、サリーの机の上にこのコールドブルックの案内書が置いてあった……。
 ナットはなぜか一度行った道をもどるなど、グループ6の行き先をだれにも知られないようにしているかのような素振りをみせながら、目的地へ向かった。だいぶ長いこと歩いて着いた場所は、スプリング・レイク・ロッジ。森の奥にあるちっぽけな小屋だ。そこはナットが秘密の隠れ家として愛用している場所で、自分以外の人に教えたのはこれが初めてだった。子どもたちは、そのおんぼろぶりにがっかりしたようだが、ナットが小屋を増築して滞在しやすくしようというと(「レディースルームを作ろう」)、みんな喜んで仕事をこなした。その晩は、なんとなくみんな打ち解けて話ができた。
 ところが、翌朝異変が起きた。ナットがどこにもいない。みんなはこれもオリエンテーリングのゲームの一部かと思い、しばらく待ってみたが、ナットはもどってこなかった。子どもたちは相談した結果、ナットに置手紙をして学校にもどりはじめた。
 ナットは子どものころからゲームが好きだった。ヴァーモントで大学に通うようになっても、ギャンブルをやめられない。しかし、その道の才能はあまりなく、「とんとん」にするのが精一杯。学費などは父親からの援助でなんとか払っていたが、その父親からもとうとう見放され、援助は打ち切られた。州から借りた学費ローンの返済ができず困っているナットに、顔見知りの大学の出納係、アーノルドが高額で簡単なバイトを紹介してくれた。アーノルドのおじのクルーザーを運転し、フロリダキーズ諸島へ行く。その晩は下船し、翌朝またクルーザーに乗り込み、運転して帰るだけ。ナットが下船している間に、ある者がアーノルドのおじ宛ての「プレゼント」をクルーザーに入れておくという。1万9千ドルのバイト。ナットはOKした。ところが、実際にいわれたとおりにしてみたものの、クルーザーに「プレゼント」は載っておらず、ナットはマフィアのボスであるアーノルドのおじから、理不尽にもフロリダへの飛行機代やクルーザーのチャーター代を請求されてしまった。しかも、払えないなら、と別の仕事を紹介された。寄宿学校で子どもたちを「実地訓練」する仕事だ。ここでいう「実地訓練」とは、子どもたちを殺すことだった。学校が親から殺しを依頼された子どもたちを、事件にすることなく抹殺するという。ここでのナットの仕事は、子どもたちを人知れない山奥の現場へ連れていくことだった。そのあとは、学校の手の者が子どもたちを殺し、ナットは学校にもどらず消えればいい。ナットは迷いながらも、「きっと殺しを依頼されるような子は殺すほうが世のためなんだろう」と自分にいいきかせ、前金を受け取ってしまった。
 しかし、実際に会ってみると、子どもたちは殺すほど悪い子たちではなさそうだった。ナットは学校の理事長と打ち合わせておいた殺しを行うための現場には行かず、自分しか場所を知らないスプリング・レイク・ロッジに子どもたちを連れていった。そして、殺しの実行日の前日の夜中、ロッジをこっそり抜けると、その翌朝、予定の現場近くへ行き、身を潜めて様子をうかがった。すると、学校の手の者(男ふたり女ひとり)がやってきた。グループ6がいないといって驚いている。そして、このときナットは気がついた。自分も子どもたちといっしょに殺される予定に入っていたことを。ナットはいそいでロッジに引き返した。
 そのころ、子どもたちは学校に向かっていた。途中、こじんまりしただれかの別荘をみつけたとき、みんなの心配が頂点に達した。もしかしたら、オリエンテーリングの途中でもどることはまずいかもしれない。みんなはこの学校ではうまくやりたいと思っていたため、慎重になった。そこで、グループの中でいちばんのしっかり者のサラが、先に学校に行って様子をうかがい、場合によってはみんなでまたロッジにもどろう、ということになった。サラはひとり、学校に向かった。
 美人で健康的でリーダー格。だれからも好かれそうなサラにも、問題があった。サラは医者の家に長女として生まれた。しかし、父親は男の子を望んでいた。サラは父親に認められたいがために、なんでもがんばった。おかげで勉強も運動も、なんでも人よりできたが、唯一作文だけは苦手だった。あるとき、サラは地元の無名作家のものらしき、タイプ原稿の山を図書館でみつけた。サラは作文の授業があるたびに、一言二言変えただけの図書館の原稿を流用するようになった。作文の成績は上がった。しかし、ついにそのことがばれてしまった。サラは留年が決定した。そのとき、父親は決めた。妻に「もうひとり子どもを作ろう。男の子を」と話すことを……。
 サラは学校に着くと、たまたま講堂に張ってあった名簿をみて驚いた。グループ6全員の名前がない。というか、グループ6というものが、存在していないことになっている。パニックになったサラは、思わず自宅にコレクトコールで電話した。すると、オペレーターから返事がかえってきた。「先方にサラという娘さんはいないそうです」サラはショック状態で、グループ6のもとへ帰った。自分たちの親が、このサバイバルゲームを学校に依頼したということ……?
 グループ6の子どもたちが途方にくれているところに、ナットが血相をかえてやってきた。「できるだけすぐにここを離れて、スプリング・レイク・ロッジへ行こう。おれを信用できるか?」みんなは戸惑うが、最後には大きくうなずいた。ロッジに着いて、一息ついたあと、ナットが真相を話した。親が自分たちを殺したがっている……! 受け入れがたい事実だったが、みんなは徐々に納得しはじめた。しかし、コークだけは「これはゲームだろ」といってきかなかった。
 翌日、グループ6は長丁場になることを考えて、仕事にとりかかった。ナットと、コーク以外の4人は、ナットが学校の理事長からもらった前金の小切手を街へ行って現金に換え、車を借り、食料など必要なものの買い出しをした。そのあと、昨日子どもたちでみつけた別荘「ロビンソン亭」(と呼ぶことにした)にやってきた。敵にみつからないようにするためには、一カ所にとどまらず、隠れ家をいくつか作って移動したほうがいい、と考えたのだ。ロビンソン亭が使えそうなら、ふたつ目の隠れ家にする予定だった。ところで、コークは朝からいなかった。みんなが止めるのをふりきって、両親に会いに行ってしまったから。しかし、本当に会うのか、会えるのかは、だれにもわからない。
 ロビンソン亭までやってくると、第六感の強いルディがいった。「中にだれかいる」そこで、ナットが4人を車の中に残して先に様子をみてくることにした。そっと裏口に行くと……たしかに、中に人がいる! それはコークだった。コークは、けっきょく両親に合わせる顔がなく、また、自分がグループから離れるとき泣いてくれたマリーゴールドのことも気になって、ロビンソン亭に先にやってきたのだった。ロビンソン亭は今のところだれかが使っている形跡もなかったため、グループ6の第2の隠れ家にすることにした。その晩、みんなが寝静まったころ、それぞれの寝室からコークとマリーゴールドが抜け出してきた。ふたりはリビングルームにやってくると、何もいわず抱き合った。マリーゴールドは下着をつけていなかった……。
 マリーゴールドはセックスに関してとてもオープンな家庭で育った。親は子どもの前でも平気でいちゃついた。しかし、けっきょく両親は離婚。そしてある日、マリーゴールドは自宅で母親と恋人が愛し合っている現場を目撃してしまう。さらにショックだったのは、その恋人がみたことのある人だったこと。その人が母親とそんな関係だとは、だれも教えてくれなかった。その人とは、新進気鋭の演劇集団を創設した人物、ジャックだった。高校の演劇で一目置かれていたマリーゴールドは、その2週間後、たまたま学校の舞台をみにきていたジャックに、劇団に入ってやってみないかと誘われた。マリーゴールドはOKした。それから約2か月後、マリーゴールドは母に「妊娠したの。中絶したい」と告げた。母親はそれまでの自分の教育から、娘は好きな人としか愛し合わないと確信していた。だから責めずに、ただ尋ねた。「その男の子はわたしの知っている子なの?」「男の子じゃなくて、男の人よ。うちのパーティにもきていた人。ジャック」そして、マリーゴールドはコールドブルックに送られた。
 グループ6はナットのもと、少しずつ体制を整えていった。ロビンソン亭の中は、人のいた痕跡が残らないようにし、いつでも逃げられるよう、荷物をまとめておいた。弓矢の武器を作り、見張りも立てた。敵にみつからない、というのを第一に行動した。
 やがて、サラの提案で、学校にあるはずの「殺人依頼の証拠」をみつけよう、ということになった。親から学校に送られた、殺人依頼の手紙か何かが必ずあるはずだ。それをこっちが握ってしまえば、もう親も学校も何もできない。まずは、学校の人の出入りを調査して、学校に侵入する手立てを探ることにした。みんなは3交替で、学校を見下ろせる木の上で見張りをすることにした。
 そのころ、コールドブルック・カントリー・スクールに、ふたりの人物がやってきた。ひとりはナットにこの仕事を紹介した人物、マフィアの甥であり、ナットの通っていたヴァーモントの大学の出納係でもあるアーノルド。マフィアから送られてきた殺し屋だ。もうひとりはナットからローンの回収をしようとやってきた州の役人、ダーリン氏だ。もちろん、ダーリン氏は、ナットが命を狙われているとは知らない。とにかく、「行方不明」のグループ6の捜索は、学校の教師であるコーンとミセス・リップル、それに学校の用務員である元軍人のレヴィの3人が行っているほか、殺し屋アーノルド、役人ダーリンも独自のルートから開始することになった。
 最初にサラとサリーが見張りに行っている間、ナットとルディは別の仕事をしてから、ひとまずスプリング・レイクに戻ってきた。今はこちらのロッジをねぐらにしている。とりあえず汚れや汗を流したかったナットは、裸になって池に入った。すると、ルディもにっこり微笑み服を脱ぎ、いっしょに入ってきた。ナットはこれまで、何人かの女性と寝たことがあったが、相手を愛したことはなかった。しかし、ルディに対しては違った。コンパクトなそのルックスが好みであることはもちろん、頭がよく、思いやりのあるルディに、ナットは最初からひかれていた。そして今、ナットは自分の気持ちを伝えた。「愛してる」「わたしも愛してる」しかし、ふたりは最後までいかなかった。コンドームがない。それでも、気持ちが通じ合ったふたりは、最高に幸せだった。
 マリーゴールドとコークは、サラとサリーの次の見張り番だったため、スプリング・レイク・ロッジでゆっくりした朝を迎えた。てきぱき朝食を作り、コークに指図するマリーゴールド。コークはマリーゴールドのそんな大人っぽいところにひかれていた。
 サラとサリーは無事に見張りの役を終えると、鬼ごっことかくれんぼをミックスしたゲームをしながら、きた道をもどりはじめた。途中、サラをつかまえたサリーが、思わずサラにキスをした。サリーは初めてサラと出会ったときから、好きになっていた。その気持ちにサラは気づいていたが、自分はサリーに対してどうなのかと考えると、はっきりわからなかった。しかし、サリーにキスをされたとき、サラはそれに応えた。嫌じゃない。もう一度キスをして、ふたりはまた、ゲームにもどった。サラはひとり、サリーから逃げながら、ロビンソン亭近くまでやってきた。すると、とつぜん声をかけられた。「こんにちは」それはなんと、追っ手のコーンだった。「ほかのやつらは、どこだ?」というコーンの問いに、サラはパニックになってかけだした。コーンがサラにライフルの照準を定める……。次の瞬間、銃声とともに倒れたのは、コーンだった。コーンの心臓には矢が刺さっていた。サリーがコーンを矢で射ったのだ。銃弾はそれ、サラは無事だった。
 そのとき、ちょうど近辺を捜索していたアーノルドが、銃声をきき、ロビンソン亭にきてしまった。近くにいたナットもルディとやってきた。アーノルドにとっては飛んで火にいる夏の虫だ。しかし、アーノルドは本心では、ナットを殺したくなかった。カードゲームを何度かやった仲だし、ナットがいいやつだということは知っている。しかし、おじの命令をきかなければ、自分が殺される。アーノルドは自分の苦しい心情を語り、「残念だがおまえを殺す」といった。そのとき、ナットに名案がひらめいた。アーノルドは、マフィア所有の火葬場にナットの死体を運んで燃やしておけ、とおじから命令されていた。だったら、コーンの死体をナットの死体と偽って、燃やしてしまえばいい……。アーノルドはその案に乗り、コーンの死体を車で運んでいった。
 その晩、ロッジに帰ったみんなは、気分転換に外で寝よう、ということになった。そこで、サラとサリー、ナットとルディ、コークとマリーゴールドというカップルで別れて寝た。ふたりきりになったみんなは、それぞれ飾ることのない自分の気持ちを相手に示すことができた。そして、6人全体の気持ちも通じ合ってきた。
 翌日、サリーとサラとマリーゴールドは再び学校に偵察に出掛け、ナットとルディはコーンがいた痕跡をなくすため、ロビンソン亭に向かい、コークは新しい隠れ家を探しに出た。
 いっぽう、学校では、前日から車で出掛けたきり帰ってこないコーンを心配して、理事長の指示のもと、ミセス・リップルとレヴィが捜索に出た。そして、ふたりはロビンソン亭でコーンの車を発見する。その様子を陰からみていたナットとルディは、ミセス・リップルたちの隙をついて、こっそりコーンの車に乗ってその場を離れた。いたずら心も芽生え、ふたりはそのままドライブと買い物に出掛ける。そのとき、ふたりはお互いに渡すプレゼントを買った。ナットはネックレスを、ルディはコンドームを。しかし、ナットはルディの気持ちに待ったをかけた。こんな特別な状況下でのセックスは、16歳のルディにとって後悔の種になるかもしれない……。ルディは拒否されたことに傷つくが、ナットの気持ちも理解した。ふたりは車を森の中に乗り捨てて、ロッジにもどった。
 その晩、ミセス・リップルとレヴィは理事長に「コーンは発見できず、車まで消えた」と報告をした。すると、理事長が提案した。「だったら、生徒に探させよう」
 翌日、理事長の指示で、急きょ全校あげてのイベントが行われることになった。森の中からコーンを探す「宝探しゲーム」だ。ゲームのあとは学校でバーベキュー大会をすることにもなった。子どもたちは大喜びで、グループごとに森の中へ出発した。教師もみな出掛け、学校はもぬけのからになった。その様子を、グループ6の面々は陰からのぞいていた。これは証拠探しをするチャンスだ。6人は、いちばん怪しいと思われる、構内にある理事長の家の書斎に入り、探しものを始める。そして、ついにみつけた。それぞれの親から理事長に宛てた、殺人依頼の手紙だった。
 と、そこに理事長たちがもどってきてしまい、鉢合わせとなってしまった。たまたま理事長たちは、バーベキューを抜けて、理事長の家でブラディ・マリーをやりながら軽く食べようということにしたのだ。みな武装しており、丸腰のグループ6たちは逃げることもできなかった。コークが、いちばん落としやすそうなレヴィに「親に頼んで金を今度もらう予定の5倍払うから(グループ6の家庭はみな金持ちだった)逃がしてほしい」といってみたが、だめだった。そこに州の役人のダーリン氏が現れた。「ニュースがあるんです。ナットという男が事故で死んで火葬されたそうですよ」ダーリン氏はナットの顔を知らなかったため、まさかこの部屋にいるひとりだとは気づいていなかった。そのうえ、ナット本人も理事長たちも、それぞれの理由から間違いを正すつもりはない。ダーリン氏が出ていくと、仕切り直しとなった。この状況では、すぐにグループ6のみんなを殺すことはできない。そのことを察知したナットは、とりあえず理事長たちが飲もうとしていたブラディ・マリーのグラスをトレーに載せて渡してやった。
 数日後、理事長や教師たちが行方不明になっていることが全校に知れ渡った。代わりに、学校の指示で特別なオリエンテーリングを行っていたグループ6が、学校にもどってきた。6人は暖かく迎えられた。
 理事長たちは死んでいた。ナットがブラディ・マリーに毒を盛ったのだ。その後は車で運び、森の奥深くに埋めた。警察が学校に調べにきたが、けっきょくなにもみつからなかった。グループ6の子どもたちは、家族に電話をして、証拠の手紙を持っていることを告げた。それは、家族への決別の電話だった。やがて、新しい理事長や学部長が据えられ、グループ6の面々は、いつのまにか学校の中で一目置かれる存在になっていた。あるとき、教師と学生からひとりずつ、学生たちの意見をまとめる代表が投票で選ばれた。結果は、ナットとルディ。ところが同じ日、ふたりは書置きを残して学校から消えた。
 ふたりはスプリング・レイク・ロッジにきていた。これから新しい家族になって、新しい暮らしを始めるつもりだ。「やっぱりここだと思った」その声はマリーゴールド。ふたりの後を追ってきたのだった。「わたしも、いっしょに住みたい」マリーゴールドの言葉に、ナットもルディも喜んだ。つづいて、グループ6の残りの3人も姿を現した。みな、移住のための荷物を背中にしょっている。コークはマリーゴールドのバックパックを持っていた。

【感想】
 サスペンスとロマンスの効いたYA作品。
 なんといっても、本作品のいちばんの魅力は、設定だ。親が自分の子どもの殺人を学校に依頼し、学校が秘密裏にその子どもたちを抹殺しようとする。ありえないような話だが、作者インタビューによると、作者は自分が設立したオルタナティヴスクールで働いていたとき、自分は親に捨てられて学校に送られてきた、という実際の子どもの言葉に出会い、それをヒントに作品を作ったという。親との衝突を経験しがちな年ごろであるティーンエイジャーにとって、自分は親に疎まれているのかもしれない、という気持ちは、他人事ではない。この作品は、ありえないような話なのだが、自分と重ねても読める要素も持っている。
 構成は、グループ6が殺人者に追われるストーリーが太い縦糸になり、6人の小さな物語が横糸になって、ときどき織り込まれている。6人の性格や、この学校に送り込まれてきた事情は、物語が進むにつれて明らかになる仕組みだ。また、太い縦糸には、逃げるグループ6の物語に、理事長たちの物語もときどき挿入され、作品にいっそうの臨場感、緊迫感を与えている。ほかにも、この作品の大切な要素であるロマンスに、かなりのページが割かれており、物語に奥行きをつけている。長めの作品だが、変化に富んでおり、最後まで読ませてくれる。
 ロマンスに関しては、YA作品らしく、セックスを大切なものとして考えること、避妊をしっかりすることなどがきちんと描かれている。裸のシーンなど、少々きわどい場面が何度か出てくるが、全体的にみて、性に関してはかなりまじめで誠実な描き方だ(それは、この作者のほかの作品にも共通しているように見受けられる)。その点からすると、若い読者に安心して手渡せる作品といえる。
 ただ、物語全般を通してみると、気になる点がいくつかあった。緊迫した状況の中、グループ6はわりと安易に森の中を動きまわり、また恋愛を楽しんでいる。複雑な地理の森の中にいるから、ということもあるが、見方によっては、少々無防備すぎる気もした。同様に、学校側も、もっと焦って6人を追ってよさそうな感じがするが、のんびりめだ。ただ、このあたりは許容範囲といえる。
 ほかには、親との関係がけっきょく壊れたまま、グループ6が新しい家族としてスタートしようとする点。自分を殺そうとした親を切り捨てるわけだが、そこが少々安易に感じられた。たしかに、「親に疎まれても憎みきれない」という心情がちらりと描かれているシーンもあるのだが、足りない気がする。本来なら、もっと葛藤があってよかったはずだ。この作品の読みどころにもなる点だけに、あっさりしすぎている観があった。
 6人が好きになる相手が重なることもなく、きれいに3組に分かれてうまくいく、というのも、簡単すぎる気がする。ただ、ロマンスを読みたい人にとっては、お約束的なストーリー展開は歓迎すべきものなので、好みのわかれるところだ。
 たとえとして「ローリング・ストーンズ」が出てくるなどの細かい点をのぞけば、20年前の作品という古さは感じない。高い水準のYA向けエンターテインメント作品なだけに、親子関係のラストの描き方が惜しい。

 copyright © 2003 Mizuhito Kanehara

 last updated 2003/12/25