管理者:金原瑞人

ERETH’S BIRTHDAY (2000) Avi HarperCollins Publishers 180p

主な登場人物
・イリーシ:年寄りのヤマアラシ。『うす暗い森』の倒れた丸太をすみかにしている。
・ポピー:メスのシロアシネズミ。イリーシのすみかの近くに夫、子どもたちと暮らす。
・ライ:ポピーの夫のキンイロネズミ。
・リーパー:母親ギツネ。三匹の子ギツネをひとりで育てる。
・ニンブル、タンブル、フリップ:生後数ヶ月のリーパーの子ども。
・バウンダー:ニンブル、タンブル、フリップの父親。リーパーの夫でもある。
・マーティ:テン。人間を恐れ、ヤマアラシを目の敵にする。
・パーカー、ウェイン:森に狩りに来た人間。

あらすじのあらすじ
イリーシは、誕生日にだれからもお祝いをいってもらえないどころか、大嫌いな子どもの面倒をみるはめになるが、子どもから教えられることも多かった。結局、父親代りにはなれなかったが、イリーシも相手の気持ちを少し考えるようになる。

要約
今日はイリーシの誕生日だというのに、ポピーはライとどこかに行ってしまった。ポピーだけは祝ってくれると信じていたのに、そんな気はこれっぽっちもなかったらしい。ポピーの子どもたちに行き先を聞いてみても、さっぱりわからず、いらだつばかりだった。何の役にも立たない子どもが大きらいなイリーシは、怒って、がむしゃらに『うす暗い森』の中を駆けぬけていった。
 ものすごいスピードで走っていくイリーシを、森の動物たちは遠くから隠れるように見ていた。こんなときは、そっとしておくに限る。こうして、イリーシは、半分は自分のせいで、だれからも誕生日を祝ってもらえなかった。
 そのうちに疲れ、お腹もすいてきた。イリーシは立ち止まって、木の皮を食べていると、いい考えが浮かんできた。だれもプレゼントをくれないのなら、自分で自分にプレゼントすればいいではないか。プレゼントは、大好きな塩にしよう。『ほそ長い湖』の方にある、狩りをしにきた人間が使う『小屋』になら塩があるだろうと見当をつけ、行ってみることにした。とはいえ人間がいたら危なくて、とても塩どころではないのだが、頭の中は塩のことしかなく、いてもたってもいられない。イリーシは危険もかえりみず、塩に向かって進みだした。
 塩のことしか頭にないイリーシは、雪がふってきたことにも、何者かにこっそりあとをつけられていることにもまったく気がつかなかった。
 あとをつけていたのは、テンのマーティだった。自らを『四つ足の死神』とよぶマーティは、持ち前の執念深さでイリーシの後をつけていき、襲いかかるチャンスをうかがっていた。
 イリーシは、雪にもめげず『小屋』に向かって突き進み、ついに到着した。が、『小屋』には人間がいたため、ひとまず『小屋』の下の物置になっているところに隠れて、いなくなるのを待つことにした。そこには、薪やスノーモービルのほかに、動物を捕まえるわながたくさん置いてあり、イリーシは人間に対して、強い憎しみを感じた。
 突然、だれかの助けを求めるさけび声が聞こえてきた。それは、メスギツネのリーパーだった。イリーシは、リーパーから、死ぬ間際、三匹の子どもたちの面倒を頼まれ、いやとはいえず、さんざん悩んだ末、教えられた巣穴へ向かって歩き出した。キツネが恐かったから行かなかったのだろうなどと言われたらたまらない。言うことだけ言って、すぐ帰るつもりだった。
 ようやく巣穴が見つかり、イリーシは子ギツネたちに用件を伝えようとしたが、どうしても言葉が出てこない。ためらい続けたせいで、返って子ギツネたちを傷つけるような言い方になってしまい、自分に嫌気がさすほどたった。
 ところが、子ギツネたちは母親の死を信じようとせず、帰りを待つといってきかなかった。イリーシは困ってしまった。このままでは、子ギツネは飢え死にしてしまう。
 夜になって、イリーシも巣穴で眠っていると、母親のぬくもりを恋しがる子ギツネにせがまれて、お腹の下に子ギツネをもぐりこませてやるはめになった。
 とはいえ、イリーシは、心底子ギツネに同情しているわけではなかった。これではまるで、わなにかったのは自分の方だとさえ思っていた。
 一方、マーティはあれからずっとあとをつけ、イリーシを襲う機会をねらっていた。が、キツネといっしょでは、手をだせない。我慢強く、チャンスをうかがうことにした。
 イリーシは、子ギツネたちから母親代わりになってくれなどと頼まれ、こっそり巣穴から出て行こうとさえしたが、自分では何にもできない子ギツネをどうしても見捨てることができなかった。そこで、本当にしかたなく、子ギツネたちをしつけてやろうとするが、全然言うことをきかない。イリーシはくたびれはて、うんざりするばかりだった。
 翌日、狩りをしようと、子ギツネを連れて巣穴の外に出てみると、危うく人間の仕掛けたわなに捕まりそうになった。これでは狩りはできない。まず、わなさがしが先だ、とイリーシは子ギツネたちに命令するが、そのうちの一匹のタンブルがイリーシのやり方に腹をたてた。父親と比べられ、おまけに口の悪さまで責められたイリーシは、すっかりしょげてしまい、何も言わずに、だまって巣穴から出ていった。
 タンブルに言われた通りかもしれない。イリーシは、自分はこんないやなやつだから、誕生日をだれも祝ってくれなかったのだろうと思った。かといって、今さら自分を変えられるわけもない。こんな自分は、やはりひとりでいるしかないのだろうか。 そう思っているところへ、フリップが引き止めにやってきた。タンブルは後悔しているという。イリーシは引き止められた後でも、なんども悪態をつきそうになるが、ついに口に出すことはなかった。そして、わなを全部見つけるか、父親ギツネが戻るまで、子ギツネといっしょにいることにした。
 だが、父親ギツネはなかなか帰ってこなかった。子ギツネたちは、父さんは仕事がいろいろ忙しいからというが、イリーシにはそうは思えなかった。
 そのころ、父親ギツネのバウンダーは、マーティと会っていた。マーティは、バウンダーにイリーシのことを告げ口しにきたのだった。そうすれば、バウンダーは子どもたちのことが心配になってすぐ巣穴に帰り、イリーシを追い出すだろうと考えてのことだった。ところが、バウンダーは、これ幸いとばかりに、子どもたちの世話はイリーシにまかせて、自分は遊びに出かけていった。
 イリーシは、巣穴に戻ってからというもの、自分の口の悪さが気にかかり、うまく話せなくなっていた。そこで、子ギツネにわなさがしをまかせて、自分はひとりで食べ物をさがしに行くことにした。巣穴のがけを登りきると、そこは森だった。イリーシは、木の皮をお腹いっぱいになるまで食べ続けた。自分が満腹になってから、子ギツネのために食べ物を探し始めた。そして、ついに見つけると、子ギツネたちに「これでわしらみんな、助かったぞ」と叫んだ。イリーシは知らぬうちに、思わず「みんな」と言っていた。
 一週間がすぎて、イリーシと子ギツネたちは、規則正しい毎日がおくれるようになっていた。子ギツネたちは、イリーシの口の悪いしゃべり方にもすっかり慣れ、なにを言われてもちっとも気にせず、かえっておもしろがるようになっていた。イリーシは、ずっとこんな日が続けばいいと、思うようになっていた。
 そこへ、突然、父親のバウンダーが帰ってきた。
 子ギツネたちは大喜びで、巣穴から飛び出していった。イリーシは素直に喜べず、そんな自分が情けなかった。ようやく巣穴からでて父親ギツネを見ると、それはなんと、以前ポピーを追いかけていたキツネだった。あのときは、イリーシがバウンダーを追い払ったが、今度は追い払われる番だった。バウンダーに、子どもたちが頼れるのは父親だけといっているから、さっさと自分の家に帰れと言われてしまった。イリーシは、言われるままに、巣穴をあとにするよりほかになかった。
 しかし、それはまったくのうそだった。子ギツネたちは、久しぶりに父親に会えたことで興奮してしまい、イリーシのことを忘れていただけだった。
 巣穴を後にしたイリーシは、がけを登ったところにある木の上で一夜をあかした。子ギツネたちに何も言わずに出てきてしまったが、一言さよならがいいたかった。
 よく眠れないまま、朝が来た。イリーシは、どうしようか迷っていた。そして、子ギツネたちが来てくれることを、心のどこかで待ち望んでいた。
 諦めかけたころ、子ギツネたちがあらわれた。子ギツネたちは、父親からイリーシはさっさと家に帰ったと聞かされていた。子ギツネにまっすぐ家へ帰らなかった理由を聞かれて、イリーシは少しずつ本当の気持ちを話していった。家に帰る前に、ひとこと別れを告げたかったこと。いっしょにいて、楽しかったこと。今では三匹とも好きになったこと。教えられたことも多かったこと。みんな、いい子だったこと。最後には、困ったときには、いつでも訪ねてくるようにとまでいって、自分のすみかの場所を教えてやった。
 イリーシはここまで言うと、これからはひとりで生きることにしたのを思い出した。つまり、もう今の家に帰るつもりはなかったのだが、あえてだまっていた。
 イリーシは、ひとりで森の中を歩いていった。子ギツネたちのことが、頭からはなれない。忘れるために、塩のことを考えて、無理矢理塩に気持ちを集中させた。そして『小屋』目指し、ひたすら歩いていった。
 ようやく『小屋』にたどりつき、幸い、人間の姿はなかったが、どうしても中に入れなかった。うろうろしていると、目の前に突如、テンがあらわれた。
 マーティは、ひどく怒っていた。イリーシは、どうして自分がそんなに怒られなければならないのか、さっぱりわからなかった。聞いてみると、自分たちテンは、いつも人間にねらわれて好きなことなどちっともできずにいるのに、ヤマアラシは、他のもののことなどこれっぽちも考えずに、好き勝手に生きているのが気に入らないらしい。イリーシは、子ギツネのことで、自分は他のヤマアラシと違って、相手のことも考えるようになったと反論したが、マーティは聞きもせず、イリーシを一撃した。
 傷を負ったイリーシは、森めがけて逃げようとしたが、その瞬間、マーティに襲いかかられた。が、間一髪のところで、子ギツネが現れて、マーティを追い払った。マーティは慌てて逃げ出した拍子に、わなにかかってしまった。イリーシも子ギツネたちも、いくらマーティに頼まれても、どうしてやることもできない。やがて人間があらわれて、わなごとマーティを連れていってしまった。人間たちは思わぬ獲物に喜びの声を上げた。ヤマアラシなんかではなくて本当によかったと言っているのを聞いて、イリーシは気分を害してしまった。
 子ギツネたちが後を追ってきたのは、言い忘れたことがあったからだった。そして、子ギツネたちが、イリーシにいくらお礼と大好きな気持ちを話しても、イリーシはそっぽを向くばかりだった。
 イリーシは、『小屋』にあるはずの塩が心残りだったが、やはり家に帰ることにした。そして子ギツネたちは、ネズミはけっして食べないことを約束して、イリーシについてきた。イリーシは口数が少なく、何度も帰るのをやめようとしたが、あのなつかしい家に戻りたかったし、なによりポピーに会いたかった。
 二日がかりで、ようやくすみかの丸太にたどりつくと、ポピーとライが誕生日のプレゼントを用意して待っていた。それは、大きな塩のかたまりだった。イリーシの誕生日に、ポピーとライは、わざわざ『新しい農場』まで塩を取りに行ったのだ。それなのに急にいなくなって、どれだけ心配したかと、ポピーがどんなに文句を言っても、イリーシには目の前の塩しか見えていなかった。なめてみると、涙の塩味も加わったせいか、ほんとうにおいしくて、イリーシにとってなによりの誕生日になったのだった。

感想
 さすが、アヴィ!
 『ポピーとライ』の売れ行きがよければ、おもしろいかも。しかしそのまえに、やっぱり『ラグウィード』かな。

 copyright © 2003-2004 Mizuhito Kanehara

 last updated 2004/3/8