スタッフのつぶやき / from staff

★チリのおばあさん(2006/3/5記)

 このホームページを開設してからの約3年間、いろんな方々からいろんなメールをいただきました。webmaster宛てのメールは、いったんスタッフに届き、そこから金原氏に転送するようになっているため、スタッフのほうでも楽しく読ませていただいています。一番多いのは講演会や取材や執筆のご依頼ですが、先日、珍しく、外国人と思われる方からメールをいただきました。

Dear Mr. Kanehara

I lived in Japan from 1936 to 1938. In 1937 the Tokyo Asahi newspaper published a photograph of a friend and I riding on bicycled and a short commentary. I have the newspaper sheet, but nobody here can translate the commentary. Besides I have two autographs from friends in Japan, but I do not know what they say. All is written in ancient Japanese.

After all these years through the Internet I hope to find someone who can help me. Having come across your name and seeing that you are a very qualified professor perhaps you can do me the favor of the translations or advice me on who can.

Yours gratefully
Irene Soler

 簡単に内容を説明すると、「私は1936年から38年まで日本に住んでいた。37年に、友人と自転車に乗っている私の写真が朝日新聞に載った。その記事と、日本の友人からもらったメッセージがあるのだが、私も含め、内容を読解できる人がまわりにいない。しかも、これらは古い日本語で書かれている。助けてくれそうな人をインターネットで探したところ、金原教授を見つけた。ご協力いただけないだろうか」という感じでしょうか。

 ただでさえお忙しいからなーと密かに思いつつメールを転送したところ、さすが金原先生、「おばあさんには親切にしたい」とのお返事でした。

 そう、名前がIrene(アイリーン)ということは、この方はたぶん女性。しかも、1937年に自転車に乗っていたということは、どう考えても70歳以上、いえ、80歳以上の可能性が高い。そもそも新聞記事が「古い日本語」だというし、いずれにしても、外国のおばあさんが懸命にインターネットで協力者を探したのは間違いなさそう。

 結局、乗りかかった船ということで、スタッフの私が協力させていただくことになりました。とりあえず現物を見せてほしいとお願いしたところ、以下の3つの画像が送られてきました。 

朝日新聞 / Asahi Newspaper色紙 / autograph色紙 / autograph

 左が新聞記事、真ん中と右が色紙です。これは確かに古い! しかも、自転車に乗っている外国人(手前の女性)は、どう見ても10代以上。ということは、やっぱりアイリーンさんは、80歳を超えているはず。もしかすると、90歳くらいの方かもしれません。

 ともあれ、さっそく目を通すと、新聞のほうはなんとか意味が分かりました。「賑はつてゐる」「けふ」などの古い日本語が確かに使われていますが、そんなに難しいことは書いてありません。ところが、色紙のほうはまったくの意味不明。そこで、同じマンションに住む70代の義母に助けを求めました。

 義母に画像を見てもらったところ、右はすぐに分かりました。神州というのは神の国、つまり日本のことで、どうやら5文字合わせて「日本万歳」(神国万歳の声)ということのようです。問題は真ん中で、「信」は分かるのですが、他の2文字が分かりません。辞書などで略字を確認したところ、どうも「望」と「愛」のようだということで、それらしい訳語をつけて送りました。(間違っていたら、教えてください。)ツバキカズラ / Copihue

 普段からビジネス系の英訳の仕事をしている夫と、今年喜寿を迎えた義母に助けられ、アイリーンさんに喜んでいただくことができました。お礼のメールには、アイリーンさんの国の「国花」である「Copihue」の画像(右)が添付されていました。この花の名前を辞書で引いて、「ツバキカズラ。別名Chile-bells」とあるのを見て、私は初めてアイリーンさんがチリ人だということを知りました。(なぜかイギリス人かアメリカ人だと思っていたので、とても驚きました。)

 70年も前に日本に住んでいたチリ人のおばあさんにますます興味を持った私は、お返しに近所の川沿いで撮った桜の写真を送り、「もしよろしければ」と詳しいことをたずねてみました。すると、以下のようなメールをいただきました。

I was surprised and very happy to receive such a kind mail from you.

Since you seem to be interested I shall tell you a short story. In 1937 my father decided that we should all, mother and three children go to live in Japan, since he had been there before and found out that he could import to Chile merchandize that at the time was unknown here. But mostly he was impressed with the country and wanted us to know it. We did not go to the "bluff" where most of the foreigners lived, but rented a lovely house in Honmoku which belonged to an English captain married to a Japanese lady. There we lived surrounded by Japanese houses and could learn about their lives. I remember the spring cleaning in the nubai season, and also the typhoon that came every year and flooded the area. We were sent to The American School in Tokyo where we went every day by bus and train. We only spoke Spanish and German since my mother is Swiss. We visited Kamakura, Miyanoshita, and many other places, we were very happy.

In 1938 my father decided to return home. It was a great shock to me, and I missed Japan for years, I can almost say all my life. I am surrounded by souvenirs and treasure the least little object. Since then I read and learned all about the country which I had been to young to know.(So now you know my age.) I have five children and eighteen grandchildren and tell them about my youth. The other day one of the grandchildren asked me "grandmother, were you born in Japan?" I only answered, "Yes" since it is true that in many ways I was born in Japan.

Please send me your address .I would like to send you an album with pictures of Chile, so that you will know us better.

My best wished to your teacher and receive the warmest regards from your friend,
Irene

 アイリーンさんは、お父さんのお仕事の関係で日本にいらしたようです。さすがに年齢は教えていただけませんでしたが、お孫さんが18人いらっしゃるとのこと! すばらしいですね。アイリーンさんからは、このあと、私と金原先生宛てにチリの写真集を送っていただきました。南北に長い国だけに、多種多様な風景があって、とても興味深かったです。

 一通のメールから、思いがけずチリ人のおばあさんと楽しい交流ができたという今回の出来事、先生から「HPに載せては」とお話しがあり、掲載させていただきました。アイリーンさんにも許可を得ています(とても喜んでおられました)。載せる場所がなかったので、「スタッフのつぶやき」というこのページを新設したわけですが、「つぶやき」とは言えない長さになってしまいました。すみません。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

 今後も、何かおもしろいエピソードや、つぶやきたいことが出てきたら、こちらに掲載させていただこうと思います。

 なお、今回のような翻訳の依頼は通常は引き受けておりませんので、どうぞご了承ください。(スタッフM)

プロフィール / profile 訳書リスト / translation list エッセイ / essay おすすめの本 / my recommendations 近況報告 / recent news
未訳の本 / untranslated books ギャラリー / gallery ニュース / news 更新履歴 / what's new 法政関連 / hosei univ.
ホーム / home

 copyright © 2006 Mizuhito Kanehara

 last updated 2006/7/7